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消しゴムBlog

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Ordinary People

普通であることの勇気を持とう

映画「64ロクヨン 前編」邦画の未来にわずかな希望を見た気がする

映画「64ロクヨン 前編」を観ました。

マンネリ化する演出、中高生の恋愛映画ばかりの邦画とはひと味違ってました。

*記事の中で補足するつもりで内容に触れています。どうしてもネタバレが嫌な方は避けて下さい。間違っても結末などは書いていませんのでご安心下さい。

 

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映画『64‐ロクヨン‐前編/後編』公式サイト

 

【映画情報】

タイトル:64 ロクヨン 前編

監督:瀬々敬久(ぜぜたかひさ)

出演者:佐藤浩市綾野剛榮倉奈々夏川結衣窪田正孝

原作:64 上・下(横山秀夫

公開:2016年5月7日

上映時間:121分


「64-ロクヨン- 前編/後編」 予告

簡単なあらすじと補足

県警の広報を担当する三上(佐藤浩市)は、かつて刑事としてある誘拐事件に関わっていた。その誘拐事件とは昭和64年に起きた(通称ロクヨン)だった。
身代金を奪われ、誘拐された少女も殺されるという最悪の結末のまま14年の月日が経ってしまった。

<平成14年>県警広報室と記者クラブはもめていた。そんな中ロクヨン事件に関して被害者宅を警察庁長官が訪問する話が持ち上がる。上司の命令で被害者遺族の雨宮を訪ねるのだが・・・

長官視察の段取りをきっかけに次々と三上は事件の隠された過去を知るようになる。
ロクヨン・長官視察・記者との対立・娘との問題など三上を取り巻く問題が複雑に絡み合っていく・・・ 

 

これだけは知っておいた方がいい原作情報【補足1】

観る前に知っておいて欲しいのは主役の三上(佐藤浩市)の顔の事。
これは物語の設定としては重要な事です。

三上は強面で、決してかっこいい顔ではないのです。そして奥さんはとても美人なのだが、娘が父親に似てしまったのです。

映画の中で三上の娘が「こんな顔イヤー!」となるのですが、これは不細工な父親に似てしまった事をコンプレックスに感じているのです。

ドラマ版の主役がピエー瀧だったのは原作の設定を考慮しての事だと思います。

主役の佐藤浩市は誰が見てもナイスミドルなのですが、そこは普通のおっさんだと思ってみると腑に落ちる点もあります。

とはいえカッコつける芝居はあまりなく情けない男を演じているところは評価されるべきところかと思いました。

 

三上の上司赤間との関係【補足②】

三上の上司赤間(滝藤賢一)はとても嫌な人間なのです。
広報官として移動してきた当初の三上は伝えるべき事件の情報を記者に公表していた。時には警察の上層部と対立する事もあった。その姿勢が記者たちからの信頼を獲ていました。

しかし、現在の三上は赤間の言いなりです。

「記者たちをおさえろ!」

「公表はするな!」

と言われればその通りにする。その態度に記者たちからも「三上さんは変わってしまった!」とやじられます。

それは「三上の娘が家出している事」が関係しています。通常、家出をしたくらいでは警察はなかなか本腰で探してくれない。しかし娘の事が心配な三上は赤間に県内だけでも捜索の手配をしてほしいと願い出るのです。

すると赤間は警視庁に連絡を入れ、県内どころか全国に手配してくれたのです。その見返りとして三上は赤間に絶対服従となってしまっているのです。

ちなみに赤間は東京からきたキャリア組なので警視庁にも相談できます。

 

横山秀夫の描く警察や新聞記者は別の生き物

横山秀夫原作を読んだ事がない方の為に言っておきます。彼の小説では「警察官」や「新聞記者」がよく主人公になります。私の印象では彼の描く「警察官」や「新聞記者」は何処か別の生き物なんじゃないかと思っています。

「警察官たるものは・・・」

「新聞記者とは・・・・」

という表現がよく出ます。とても職業意識が強く、熱意とプライドを持って仕事をしている人達です。

ここまで熱意ある人いるの?と思う方がいるかもしれないですが、これは横山秀夫原作の魅力だと捉えていただければと思います。

 

 

感情のぶつけ合いが魅力

結論からいうと「見て良かったな!」と思える映画でした。

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 http://eiga.com/movie/81855/gallery/3/

 

犯人さがしがメインディッシュではない

サスペンス・ミステリー映画の部類ではありますが、犯人さがしがメインディッシュではないと思います。特に「前編」はそうです。

たしかに隠された事実が出て来たり、伏線がたくさんあるのですが、そればかりを期待しているとちょっと物足りない感じになるかもしれません。

多分後編はもっとスリリングになると思いますが、前編では登場人物たちの想いをメインにみるべきかと思います。そして、それがちゃんと描かれている映画だと思います。

ちょっとおおげさにいうと佐藤浩市をメインとした群像劇なのです。 

 

わずかに希望を感じる邦画演出

どうしても派手なアクション映画などと比べるとインパクトで見劣りする邦画ですが、この映画に関してはそれに負けない演出があったと思います。

それは感情がぶつかり合うシーンです。

怒り・プライド・悲しみなど様々な感情をいだいた人間たちが感情をぶつけ合うのです。これには他の邦画にはない圧倒的な熱量を感じました。

このシーンが成立するには背景を丁寧に描いてこそだと思います。これからもっと盛り上がる後編にも期待したいです。

  

青臭い世界でいいじゃないか

この映画の根底にあるのは「話せばわかる」という精神があると思います。とても青臭い世界観なのですが、映画の中くらいはこんな世界があってもいいじゃないかと思います。

「本音と本音でぶつかり合う」という台詞でありますが、実はこの映画の世界観を表しているような気がします。

 

こんなに古いかな?と思う平成14年

映画の中の現在時制は平成14年です。今から13年くらい前のことなのですが、こんなに古くさかったかな?と思ってしまいます。

20代の人が見たら「こんなもんでしょ?」と思うかもしれないですが、当時をよく知る私としては大昔のように感じました。

もともと横山秀夫原作の世界観自体がちょっと昔気質なところがあるので、これくらいの方が合っていると言えば合ってるのかもしれません。

30代以上の方はそのあたりご注目下さい。

 

 

ちょっと残念だったところ

面白かったのですが、全てが良かったわけではないです。
ちょっと個人的には残念だったところを書きます。

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http://eiga.com/movie/81855/gallery/8/

 

顔のアップが多過ぎる事

ここぞ!ってところで顔の表情をアップにするから効果的だと思うのですが、今回はそれが多過ぎたなと思います。感情的なところでアップにしても効果が薄れてしまってたように感じます。

顔のアップが多いと個人的にはTVドラマのような印象を受けてしまうので、ちょっと残念でした。

 

豪華キャストを揃えすぎた事

主役級のキャストが何人も集まっています。確かに豪華キャストという意味ではインパクトはあるのですが、もう少し脇役には脇役として味のある芝居をしているキャストを配置してほしかったです。 

 

  

ドラマ版との比較

去年NHKで放送されたドラマ 64 ロクヨン DVDBOX との比較をしたいと思います。

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 http://eiga.com/movie/81855/gallery/9/

 

展開のスピードについて

ドラマ版と比べるとはやり展開は早いです。ドラマ版は5話あるのでじっくりと展開できます。しかし、映画版の方がスリリングになって良かったと思います。

ちょっと早いかなと思う部分もあったので公式サイトなどを見て少し予習した方がいいかもしれないです。

 映画『64‐ロクヨン‐前編/後編』公式サイト

 

出演者について

出演者はほんと豪華です。ドラマ版はちょっと地味ですが内容には沿っていたと思います。ドラマ版と比べてもこちらの方がよかった!と思える3人を紹介します。

 

永瀬正敏

老けたなぁという印象ですが、役作りとはいえ、とてもいい感じに老けていました。

 

榮倉奈々

ほんとに脇役なのですが、ちゃんと脇役に徹していたと思います。三上(佐藤浩市)に意見するところがよかったです。

 

滝藤賢一

嫌な役柄がぴったりはまっていたと思います。エリート意識が強く出ていて、歩いているだけで「嫌なやつ」とはっきり判ります。 

  

 

音楽について

ドラマ版:大友良英
 映画版:村松崇継

これはドラマ版の方がよかったですね。好みではあると思います。

別に映画版が悪いというわけではないです。ただドラマ版の方がもっと不気味さがありました。

たぶん大友さんのノイズミュージックが上手くかみ合っていたのだと思います。

  

 

まとめ

大人も楽しめる邦画大作といった感じです。

前編の終わり方としてはほぼ満点をあげてもいいと思います。よっぽどの事がない限り後編を見たいと思います。

ラストを変えているという噂もありますので、その辺も期待してもいいのかなと思える出来映えでした。

 

もし興味がある方は原作を読んでから観てもいいかもしれないです。

 

64(ロクヨン) 上 (文春文庫)

64(ロクヨン) 上 (文春文庫)

 

 

64(ロクヨン) 下 (文春文庫)

64(ロクヨン) 下 (文春文庫)

 

 

 

 

では、またどこかで。