町田康の「ギケイキ」を読みました。
【本の情報】
タイトル:「ギケイキ 千年の流転」
作者:町田康
出版社:河出書房新社
出版時期:2016年5月12日
ギケイキとは「義経記」のこと
この本のタイトルのギケイキは軍記の「義経記(ぎけいき)」の事です。
源義経の一生が書かれています。
物語の内容をざっくりいうと、義経が生まれたところから平家を滅ぼそうと源頼朝が挙兵したところまでです。(多分続きがあると思います。まだ平家滅ぼしてないので)
面白く歴史を語っている
文体がめちゃくちゃ笑えます。そんな風には絶対言ってないだろうと思うのですが、面白いから許せてしまいます。とはいえ、歴史物なのでちゃんと抑えるべきところは抑えてあるので、読んでいて「へぇーそうなんだ」と知る事もあります。
ただし私自身が歴史にあまり詳しくないので、どこまで正しいのか?を判断できないのですが、多分正しいと思います。
堅苦しいイメージのある歴史を現代風にアレンジするのは、最近の流行なのでしょうか。
最近では「エグスプロージョン」が人気ですよね。
「小野妹子 -遣隋使-」 踊る授業シリーズ 【踊ってみたんすけれども】 エグスプロージョン
このはじけた感じが文体になっているというイメージです。
いくつか引用します
実際の「ギケイキ」の中身をいくつか引用します。文は基本的に義経自身が語っている形になっています。
*義経が自分の格好を一通り説明したあとの文章がこちら
いまこんな恰好で歩いていたら、ロケですか? って聞かれるに違いないが、当時はこれがnew lookだった。このキャラに似合ったfashion,fashionなのだった。
お化粧をしているうちにさっき感じていた意味のわからない悲哀のような感情が自分のなかで高まって、私は横笛を取り出して吹いた。
「new look」とか歴史物で出てこないでしょ。
意味も無く横文字も入ってくるで驚きますよ。
*義経が平家滅亡の為にいろんな人を頼りにいきます。
そしてこれは「成長したら自分を頼ってこい」といった陵介重頼(みさぎのすけしげより)という人物を訪ねたときの裏での会話。
「ああ、どうしようどうしようどうしよう」
「どうしたのですか」
「むっさやばい、むっさやばい」
「あいつだよ。あの男だよ。あれ、誰だと思う。源氏の御曹司だよ」
「嘘じゃないんですか」
「嘘じゃないよ。なに言ってんだよ。俺はあいつと前に鞍馬山であったんだ」
「でなにがやばいんですか」
「あああ、もう苛々するなぁ。わからんか。あいつが平家を滅ぼすから手伝えと、味方になれと、加勢せぇ、とこう言うてきたんやないか。考えただけで小便ちびるでしょ。っていうかもうちびってるでしょ」
会話がいつもこんな感じで展開される。そんな風には絶対話してないのだが、その時の様子が面白く且つちゃんと伝わってくるから不思議です。
*弁慶が刀を千本集めていて、最後に義経に出会うところ
「あと一本でついに千。おほほ」
(中略)
堀川沿いに南に下っていくと、誰ぞの吹く笛の音が聞こえてきた。
「おおお、誰か笛、吹いてる。いいなあ、なんかいい感じだなあ。きっと天神に参る人が笛を吹いてるのだろうけれども、どういう奴だろう。おっさんかなあ。それとも坊さんかなあ。ま、どっちゃでもよいが、なんしょ、ええ刀を持っている人であることを祈るのみだよ、こっちは」
と言ってこの後弁慶は義経から刀を奪う為に戦いを挑みます。
その弁慶のやられ方や、その時の台詞もめちゃくちゃ情けないのが笑えます。
まとめ
歴史物なんて堅苦しいと思っている人には、是非おススメです。
ただし上記のような感じで書かれているので無駄にボリュームはあります。340ページくらはあったと思います。
それでも詳しいことが書かれているし難しい事が出てきたら「現代風にいうとこういう感じだ」と面白おかしく例えてくれるので、よくわからないという事はないです。
それから文体が面白いのでブログなどを書く人は参考にしてみてはいかがでしょうか。
では、またどこかで。